中々に長くなりました。
あいすみませんが飽きた時は皆様それぞれに、適当な所で区切ってお茶の時間を挟むなどされて、いい塩梅でご覧下さい。
では記事へ。
《青髭》
昔話は大抵、古い程に荒々しく残酷な面を残している。
楽しませるだけでなく、恐怖と教訓をセットで提供して、主な聞き手であるちいさな人達を上手く操縦することもお話の役割だった。
ちいさな人達の扱いが「子ども」から、「お子様」に格上げされるにつれ、物語もソフトに洗練されて行く。
それでも血生臭さが消えない話もある。
お子様向け昔話の打線にはまるで入ってこないし、ベンチ入りしてるのも見かけない。
でも登録抹消もなく、ずっと名鑑には載っている謎存在。
それが本日記事でご紹介する『青髭』である。
大っぴらにはしたくないが、強く惹かれる何かがあり忘れがたい。
人類意識にとり、青髭とはそう言う物語なのだろう。
ざっとあらすじをご紹介してみる。
若く美しい娘の元に、ある時魅力的な縁談が舞い込む。
相手は大金持ちの貴族で、ちょっぴり気になる二つの点を除けば申し分ない人物。
ちょっぴり気になるポイント一つ目の為に気が進まなかった彼女も、実際会ってみた相手の態度がとても礼儀正しく知的で優しかったことから「その位、まいっか」となる。
まいっかでクリアになった一個目の難は、彼氏のお髭が真っ青だと言うこと。
いかにも目立つその点と共に、何となくなし崩し的に大丈夫になっちゃった二つ目の難が
「これまで結構な数の女がこの相手に嫁いでるのに、全員がその後は行方不明」
よくクリアになったものだ。
髭が青いとか青くないとか、瞬時に吹っ飛ぶ程こっちの方がどえらい難だと思うが、お金持ちだし貴族だったからか、意外に優しいと言うギャップに好感を持ったのか、娘は青髭の元に嫁ぐ。
遠出の多い夫は、留守を預かる新妻に鍵の束を渡す。
どの部屋も好きに開けて見て構わないが、奥の小部屋だけは、開けても入ってもいけないよ。
そう釘を指して夫は出かける。
どの部屋も豪華で暫くは楽しかったが、留守番メインの新妻ライフは超暇。
彼女は好奇心に負けて、ついに奥の小部屋を開けて覗き見てしまう。
部屋の中に並んで吊るされていたのは、先妻達の死体。
新妻は恐怖のあまり手を滑らせて、鍵を床の血溜まりに落としてしまう。
鍵についた血の染みは、彼女が言いつけを破ったことを証すように、幾ら擦っても落ちなかった。
戻った夫は鍵を返すよう求める。
散々言い訳をした後、泣く泣く妻が鍵を返すと、血の染みを見た夫は先妻の列に新しい妻も加えることにする。
ここから意外なキャラクターが奇妙な活躍をする。
妻には「姉」がいる。
この姉が、夫に殺されそうな妻を助けに来る「二人の兄達」が到着するまで、何処まで近づいて居るかの報告係をする。
青髭旦那に妻が追い詰められてる間、逃げる手伝いも喧嘩の加勢もせず、姉は塔の上から兄達の乗った馬が来るのを見ている。
ついに妻は捕まり、泣きながら命乞いするが、青髭は聞かない。
あわや一貫の終わりと言うところで、竜騎兵と近衛兵である兄達が現場に駆けつけ、青髭の方が殺される。
亭主の遺した財産を兄達と姉にも分けて、妻は豊かに暮らしましたとさ。
確認し終えて首を傾げた。
「ハッピー、エンド。か?」
単純により強い方が勝つとか、誰か殺してる奴なら殺していいとか。
安全と財の所有が幸福とか。
ハテナが沢山飛ぶ締め括りである。
だが、この物語を静かに見つめ、突如気がつき息を飲んだ。
殺され続けた妻達は、目覚めぬままの意識から離れた代々の御神体を表す。
約束を守らないとか気に入らないとか飽きたとか。
分割意識側の都合で、幾度も御神体を始末しけ続けた不覚の歴史のデータ。
奥の小部屋には、その気まずいデータが隠されている。
そりゃ新妻も震え上がるはずだ。
エゴに侵食された分割意識は、伴侶を物の様に扱うことに慣れきって、壊すことにも慣れきってしまっている。
慈しむことなど思いもよらず、自分の言いつけ通りに動く相手かどうか、わざと意地悪く試したりする。
それが出来ない妻なら、また新調すればいい。
青い髭は分割意識の過剰な「俺が俺が」状態が、毛になって滲み出して来た、意識の氷柱だ。
そうした勝手な振る舞いにも終わりが来る。
新妻の助けを求める声に駆けつけたのが、兄と言う年上の男達。上の男性性である。
それが到着するまで、妻の気力を支えたのが姉と言う上の女性性。
これは上=高次元のサポートで、強いたげられてきた女性性が解放されることを示している。
殺戮は止み、御神体を粗末に扱うだけの、我欲にまみれた分割意識の方が物理次元を退場する。
当たり前だが、意識も全母から生み成されている。変容と言う成長をしない意識は、全母の元に回収される。
変容は、真の誕生と言い換えることも出来る。
不覚とは未だ生まれず殻の中で動いている状態なので、時期が来たらそりゃ流れて行く。
エゴと手に手をとって「これが最後の恋!」かなんか言って、不覚を満喫してお去りになるならそれはそれで結構。
全力の不覚遊びには、拍手したっていい。
只、「女房チェンジで俺だけ戻ってこよっ」と思ってる分割意識には、既に青髭の時代が来ていることを一応ここに書いておく。
新時代を見る見ないは自由だが、その意志がある方々は、威厳を保つ髭を伸ばす暇があったら、それぞれの女房に尽くしてみることである。
去る方々は、見送りには行かないんで、ここで!
(2018/5/24)