《雪の女王》
世の中には実に様々な記念日が存在する。
本日は、『日本最低気温の日』であるらしい。
1902年(明治35年)1月25日、北海道上川地方旭川市でマイナス41.0℃が記録された。
気象庁公式記録の対象となっている場所の中で最も低い温度。これが現時点での日本の気象観測史上の最低気温となっている。
マイナス40℃位の世界って、どんな感じなのだろうか。
調べてみたら1年の約4分の1、3か月程の平均気温がマイナス40℃前後と言う場所があった。
「世界一寒い町」と言われる、シベリア東部のヤクーツクである。
冷凍する必要がないので地元の市場では魚が生花の様に挿して並べられ、人々が近所へ出かける時は目的地に着くまでの合間合間に途中の家を訪ねて暖を取る休憩を挟むらしい。
寒さが、快不快を超えて命に関わるレベル。
おまけに10メートル先でも視界不良となり、似た景色が続く町中では簡単に迷子になるらしく、そうなると確かに外出は中々の冒険な気がする。
色んな暮らしがあるもんだと感心した。
ちなみに世界最低気温の記録は南極で計測されたマイナス97.8℃。
人間は数回呼吸しただけで肺から出血して即死と言う程の気温らしい。どうやって計ったのだろうか。
寒さと言う体感について意識を向けていて、先日からチョロチョロと上に提示されていた物語、『雪の女王』のことを思い出した。
ディズニー映画『アナと雪の女王』のヒントになった作品。
原作ではなくヒントとかオマージュとか言った方が適切だろう程に改変されている為、アナ雪にも興味深いメッセージが多く見られるが、『雪の女王』の教えてくれるものとは中身が大分違っている。
アンデルセンの『雪の女王』について本日記事ではその内容を、受け取れるメッセージについては次回記事で、二回に分けて書かせて頂くことにする。
どんな話か御存じない方も居られるかも知れないので、かいつまんでご紹介する。
“物語は邪悪な小鬼が、物事が歪んで映る鏡を作ったことから始まる。
この鏡を使って神や天使をからかいに行こうとした途中で、嘲笑いが酷すぎて鏡を地上に落っことし割ってしまった。
無数の破片となった鏡は散り散りになって、広い世間のあちこちに飛んで行った。
その世間の一角、ある所にカイと言う少年とガーダ(ゲルダ)と言う少女がいた。
二人はとても仲が良く、向かい合った部屋にそれぞれの家族と住み、両方の窓辺のちょうど間に置いた二つの木箱の中で野菜や、美しい薔薇を育てていた。
ある日、悪魔の作った鏡の破片が降って来てカイの目と胸に刺さり、彼の性格は冷たく歪んだものに一変してしまう。
カイは理屈屋で意地悪になり、ガーダを馬鹿にする様になる。
雪の日にカイはソリ遊びをしていて、どこからか現れた雪の女王に出会った。
女王の乗っていたソリを気に入ったカイは、自分のソリを後ろに繋げて速く走ろうと思いつき、そのまま連れ去られてしまう。
居なくなってしまったカイはきっと川で溺れ死んだのだと人々が言うので、ガーダもお日様や燕にそうなのねと言うが、返事は違うものだった。
そこで彼女は川に新しい靴を投げて、カイの命を取ったのならこれをあげるから返して欲しいと言う。
すると、川はそんなことはしないとばかりに靴を返して来る。
もっと遠くに靴を投げてみようと近くに繋いであった船に乗って舳先から靴を投げる間に、船は舫を解かれて川を進み始める。
初めは驚いて泣いていたものの、そのままカイを探しに行くことにしたガーダは、鳥や花、動物など様々な自然の声を聴きながら旅を続ける。
途中、出会ったカラスの助けで王子様とお姫様の協力を得て馬車を貰ったが、それを狙った山賊に捕らえられる。
山賊の娘に気に入られたガーダは、娘が可愛がっていたハトに、カイは雪の女王のソリに乗って北極圏にあるラップランドに向かったと教えられる。
娘がくれたトナカイの背に乗って、僻地に住む賢者の様な不思議な女達の元を順に尋ね、彼女達の協力もあってガーダはとうとう北極にある雪の女王の宮殿にたどり着く。
その頃、カイは雪の女王に出された宿題の様なものを解こうとしていた。
それは氷の欠片を並べて特別な言葉、「永遠」を作ると言うものだった。
「永遠」が出来たら女王から、自由と世界と新しいスケート靴を貰えることになっている。
どうにも完成させられないでいるカイを宮殿に残して、女王は火山に雪を降らせに出かけて行った。
ようやく宮殿でカイを見つけたガーダは、再会に涙を流して喜ぶ。
温かな涙はカイの凍った心臓も、そこに突き刺さった鏡の破片も溶かし、破片はカイの目から涙と共に出て来た。
カイはガーダのことを思い出し、家のことも、薔薇のことも、二人で歌った薔薇の花の出て来る讃美歌のことも思い出す。
喜ぶ二人の傍でカイの並べていた氷の欠片までも喜んで踊り、踊りつかれて止まった形は「永遠」を記していた。
二人は女王の宮殿を出て、ガーダが来た道を戻って帰る。
出会った協力者との再会も経て、ようやく家に帰ると、純粋な心のままにすっかり大人になった互いに気がつき、そしてもう夏が来ていることを知るのだった。”
かいつまんでもこの長さ。
本編は7つの物語に分かれている。
読み進める内に、世の中に数え切れない程ある創作冒険物語にあまり見かけない要素を、この物語が幾つも持っていることに気づいた。
そしてその中に虚空からのメッセージを受け取るのに必要なポイント、モノコトの自然な流れに乗るポイントも発見した。
次回記事にて書かせて頂くことにする。
大寒は過ぎたが立春にはまだある。
気が向かれた方は、冬らしい空気を味わえるこの時期に本作を御一読頂くと、更なる発見が生まれるかも知れない。
凍っても、溶かせる。
(2021/1/25)