《段取る神》
モノコトを円滑に進めるにあたり、まず力を注ぐのが段取り。
段取り八分とは古くからある表現で、更に分かり易く強調して、段取り八分仕事二分と言ったりもする。
強調するあまりに段取りを仕事から外しているが、段取りもまた大切な仕事の一つである。
実行を伴う段取りならば。
実行を伴わない思い描きや、不満や不安を放つばかりの思い散らかしであれば、それは何かを生み成す下地となる仕事とは言えない。
プランナーとしてのオモイカネの仕事を観察してみると、多岐にわたる興味深い内容であったので本日記事ではまずその段取りをご紹介申し上げる。
天岩戸を開く前に、色々と準備がある。
まず、常世の長鳴鳥を集めて鳴かせた。
これは朝を知らせて鳴く習性がある鶏のことで、太陽が出ますよ~と言う開会宣言みたいなものである。
朝つまりは光を呼ぶ鶏の鳴き声が、悪神・悪霊を恐れさせて追い払うとの解説を、集めた資料の中に発見した。
成る程、まず場をスッキリとした状態にして、儀式に臨む意味もあるのかも知れない。
さて次に、天の安の河の川上にある堅い岩石を金敷用に運び込み、鉱山から鉄鋼を採取。
中々大掛かりな話になって来た。
そうして鍛冶の男神アマツマラを呼び、鏡作りの女神イシコリドメに命じて、この二神に大きな鏡を作らせた。
準備は着々と進む。
次には、玉作りの神タマノオヤに命じて、沢山の勾玉を長い緒に貫き通した玉飾りを作らせた。
こしらえる系はここで作業終了となる。
次に、言霊の神アメノコヤネと祭祀の神フトダマを呼ぶ。
天の香具山に棲む雄鹿の肩骨を丸抜きに抜き取り、同じ山にある木で骨を焼いて、そこに出来る裂け目で二神に神意を占わせた。
神が占う神意って何なのか、占った神意がどんなものであったかについては書かれていない。
だがここを経て更に儀式は続くので、何かしらのGOサインが出たのだろう。
お次は天の香具山で葉をよく茂らせた榊を根から丸ごと掘り取る。
木の枝を上・中・下の3エリアに分け、上には先程の玉飾り、中には大きな鏡、そして下には楮で作った白い幣と麻で作った青い幣を下げる。
丸ごと一本の木にあれやこれや飾る様子はクリスマスツリーに似ている。
このツリー風榊を、神に献上する品々として先程の占い参加メンバーであるフトダマが捧げ持ち、アメノコヤネが祝詞を唱える。
榊がツリーだとすると、祝詞は聖歌的な感じだろうか。
ここまで来てようやく、アメノタジカラオとアメノウズメが登場する、世に知られた天岩戸開きの話になる。
天岩戸については以前も記事に書いたが段取りの一環として紹介するとこの後は、
剛力のアメノタジカラオが岩戸の脇に隠れて立つ。
そしてアメノウズメが、天の香具山から調達して来た日陰葛を襷掛けにして、真折の葛を髪に飾り、更に笹の葉を束ねたものを手に持つ。
この笹も天の香具山産であり、大抵の材料はこの山に行けば揃うらしい。
アメノウズメが空の桶を引っくり返したものに乗って足を踏み鳴らし、いよいよ岩戸開きのイベントがスタート。
神がかりしたアメノウズメは、乳房を丸っと出し、裳の紐を陰部に垂らした。
すると高天原を揺るがす程に八百万の神々が爆笑し、会場がドッカンドッカン沸く。
神々の笑い声を不思議に感じたアマテラスは岩戸を細目に開け、太陽が出ていなくて真っ暗なはずなのに皆が楽しそうなのは何故なのかを外に尋ねた。
アメノウズメが、アマテラスに益して貴い神が居るので皆喜んで楽しく遊んでいると答えている間に、アメノコヤネとフトダマが榊につけていた大鏡を差し出してアマテラスに見せる。
鏡に映った神を不思議に感じたアマテラスが、戸から身を乗り出した所でアメノタジカラオがその手を取って表に引き出す。
フトダマが注連縄をアマテラスの後ろに渡して、もうこの中に戻ってはならないと諫めた。
以上で大団円、そして閉会となる。
こうしてみると準備も含めてかなりの段取りを経ており、その一つ一つに様々な神の特性が活かされている。
来週記事ではそこから気づいたことと、オモイカネの思い方について書かせて頂くことにする。
チームワークで太陽復活。
(2022/4/21)