《呼ばれて飛び出て》
各地で桜の開花宣言が相次ぎ、心に釣られて鼻までソワソワする季節。
有名なクシャミシーズンの到来を受けて、本日記事ではこの存在についての気づきをご紹介。
これは1969から1970にかけて放映したTVアニメーション作品で、映像に出て来るアラビアンナイトっぽい格好をした大柄な男性が主人公。
彼が住む世界は壷の中にあり、クシャミ切っ掛けで外に出て来る。
壷に向かってハクションとやった相手を主人として仕える大魔王なのだ。
だからハクション大魔王。主人公なのにご主人が居てややこしい。
そんな大魔王の主人は小学二年生の“カンちゃん”こと与山田かんいち。
壷からで出て来た謎の存在に対しあっさりと「大」をもいで、「魔王!」、呼ばれた方も「カンちゃん!」と気さくに返す間柄である。
勉強が苦手で世間では落ちこぼれ的なカンちゃん。
つい魔王の力をアテにして、色んな無理難題を吹っかける。
大魔王が小学生のオーダーに付き合わされて起こす騒動のあり得なさが、この作品の面白さの一つ。
もう一つ、魔王には娘が居る。
父はクシャミ、娘はアクビで壷から飛び出して来る。
アクビちゃんが加わることで騒動が何とかまとまったり、逆に激化したりする。
キュートな彼女の存在も、この作品の魅力の一つである。
大魔王と言ってもこの魔王、全然悪じゃないし、冷酷でもないし、何より有能じゃない。
算数が苦手なカンちゃんと同じ様に数字に弱く、これまたカンちゃんと同じで犬のブル公が大の苦手。
嘘が嫌いで涙もろい時点で、「大悪魔王」にはちょっとなり得なさそうだ。
カンちゃんとたまにケンカしたりしながらも、基本お願いごとの達成には一生懸命。
叶うかどうかは別として、やれることはやって壷に帰って行く。か、屋根裏で過ごす。
この存在を観察していて、ある瞬間に「あっ、そうか」と腑に落ちた。
カンちゃんは壺柄の服を着ている。
魔王はカンちゃんの一部分、カンちゃんの「全開にしていない創造性」の化身なのだ。
だから、カンちゃんの我が侭は、魔王の力の綻びである「おっちょこちょい」や「予想外の騒動」に即、通じる。
矛盾に満ちて一生懸命で、間抜けで騒々しく、どこか憎めない。
そんな魔王は、成長中の分割意識であるカン(観/神)ちゃんが、ブレながらも発揮する神通力。
そしてアクビちゃんは分割意識が不覚の眠りの中へと、のめり込みそうになった時にハッと意識を取り戻す、緊急ブザーになっている。
かわい顔して色白で智恵がまわって明るくて。
才気煥発な彼女の“玉にキズ”とされる「派手なイタズラ」こそが、カンちゃんをワッと驚かし、不覚の夢をペシャンコにする。
彼らは一年かけてドタバタし、最終回に大きな変化を見せた。
急なシリアス展開で、当時のお子様はショックを受けたのではないだろうか。
魔王の父、大々魔王から命じられた「つぼの掟」により、魔王親子は100年間、魔法の壷に封印されることになったのだ。
壷に帰る晩にかぐや姫越えの引き止め大作戦が決行される。
今まで出たキャラクターが総出で、魔王親子が壷に戻ることを阻止しようと頑張る。
だが、その介もなく音波や光線や何やかやで、結局クシャミもアクビも出てしまう。
決め手が月の光な所が、まさにかぐや姫である。
魔王親子はカンちゃんに別れを告げ、魔法の壷へと帰って行き、壷も消え去った。
悲しい別れの様でいて、実はそうではない。
カンちゃんは自身や、自身が大事と感じた存在、とにかく部分に向けて魔の力を使って来た。
そうした個の我欲を満たそうとする騒動をやり尽くし、そこの段階を抜けたので、「卒業」として魔王やアクビちゃんとアクセス出来なくなったのだ。
100年は、100%に言い換えることが出来る。
カンちゃんが100%の完全なる覚醒を体験し、変容した先にちょいとクシャミをしたならば、
ものすごい魔王が出て来る。
イタズラで困らせながらも何かと世話を焼き、陰ではカンちゃんに惚れていたちっちゃなアクビ娘も、素敵な女神となって飛び出て来る。
不覚全盛期にエゴで奮って来た中途半端なサイキックに決意でお別れした端末は、最初は「ヒゲを切られた猫」の様な不安な無力さを味わうこともあるだろう。
勝手が違う。
話が違う。
思てたんと違う。
だが少しずつ、繊細な感覚が開いて来ると、全一の波に自然と乗れる様になって来る。
もう、裏っかわの不安「もっかいクシャミしたら魔王帰っちゃう!」と戦わなくていいし、そもそも敵が居なくなる。
クシャミは全体にとって必要な時に必要な風に起き、我欲でしのいでいた時代よりずっと確かなものが呼ばれて飛び出て来る。
全体に捧げる力、真の魔法を発揮することが出来るのだ。
真の魔法とは勿論、天意からの愛のことである。
魔術は廃れる、魔法は残る。
(2018/3/22)