今週も男の母性について、お送りします。
あまりに長いので二つに分けたら、その両方が長くなりました。
飽きない様になるべく画像を増やした所、更にボリュームアップ。
誠にあいすみませんが、小分けにする等なさって根気よくご覧下さい。
今月のふろくは割愛し、別の月に二つご用意します。
では記事へ。
《不死身の解放者》
昨年、「男の母性」に関して申し上げる際に重要と知らせたこの物件。
彼とその周辺の存在達をまとめて読み解こうとトライした所、何とも広くて深い情報群が立ち上がって来た。
ルパンと霊性についてはもっと時をかけることにする。
それでも今の今必要な、『ルパンと男の母性』のご説明には全く差し支えない。
ルパンの全母性が現れている作品はテレビ版映画版の両方で、おそらくこの一作だけだからである。
一作だけだが内容は濃く、話せば長くなる。
彼の全母性については木曜記事に譲り、本日は作品の大まかな流れを読み解きも交えてご紹介。
国営カジノから盗んだ山程の紙幣が、全て『ゴート札』と呼ばれる偽札だったことを切っ掛けに、ゴート札作りの震源地カリオストロ公国、“生きては帰れぬブラックホール”と呼ばれる場所へ「仕事」をしに行くルパンと次元。
ここでもうブラックホールに象徴される虚空への入滅と、生きたままでは帰れない、つまり死を通過し復活再生をすることが暗示されている。
着いて早々に、逃げる若い女と追う怪しい男達のカーチェイスを目撃し、そこにノリで参加。
一度は女を助け出すが、うっかりからのアクシデントで追っ手に奪い去られてしまう。
彼女が残していった指輪によってルパンの脳裏に、十数年前この国を訪れた時の記憶が蘇った。
指輪の持ち主、公女クラリスの自由を取り戻すべく、ルパン達が動き出す。
湖上にかかる橋で繋がれた大公の城と伯爵の城。
数年前に城で起きた火事で、両親である大公夫妻を亡くしたクラリス。
摂政を務める伯爵との結婚を強いられて逃げ出したが、再び伯爵の城に連れ戻されてしまった。
伯爵。多分火事の原因。
でも、結婚に必要な指輪はルパンが持っている。
早速、刺客に命を狙われるルパンと次元。
上手いこと逃げて伯爵の城を見渡せる焼けた古城に陣取ると、そこに五右衛門が来る。
伯爵の城には銭形警部と埼玉県警のスタッフも到着。
向こうには不二子ちゃんも潜入しており、何だか賑やかになって来た。
橋の下に沿って湖底を延びるローマ水道から、伯爵の城に侵入するルパン。
様々なピンチをくぐり抜け、どうにか囚われの花嫁が居る塔に到着。
クラリスにルパンは指輪を渡し、泥棒である彼が盗み出すものは彼女だと言う。
「金庫に閉じ込められた宝石達を救い出し、
無理矢理花嫁にされようとしている女の子は緑の野に放してあげる。
これみんな泥棒の仕事なんです」
小粋な会話と可愛い手品。
束の間、笑う二人。
そこに伯爵と手下達が登場。
開く仕掛けのある床から地下に続く穴に落とされるルパン。
ここで伯爵からミニ情報。
カリオストロは大公家と伯爵家の二つに分かれ、光り輝く大公家の裏で、謀略や暗殺等の血塗られた仕事は伯爵家が請け負って来た。
それが400年の年月を経て、この結婚で一つになるのだと言う。
二つの家には同じ、“古いゴートの血”が流れているらしい。
古い血と古い血を掛け合わせて何になるんだと思うが、伯爵には重要なことだそうだ。
『光と影 再び一つとなりて 蘇らん』
死滅したゴート文字でそう印された二つの指輪、伯爵家に伝わる金の山羊の指輪と、大公家に伝わる銀の山羊の指輪が一つに重なることで、秘められた先祖の財宝が蘇るシステム。
気が緩んでぺらぺら喋ったのをクラリスに渡した「通話機能付き偽指輪」でルパンに聴かれ、しかも本物の指輪はさっき落っことした泥棒が持っていることを知り激怒する伯爵。
偽の指輪は爆発。
ルパンが降り立った地下にあったのは、伯爵家が何かあるたびに落っことし続けて殺しに殺した400年分の遺骨。
古い血と恨み、恐怖と絶望が、折り重なって朽ちている空間。
あまりの惨さに思わずナンマンダブナンマンダブと唱えていると、そこに何だか遺骨じゃない者の気配。
先に落っことされた銭形の父っつぁんと再会する。
父っつぁんもナンマンダブ(南無阿弥陀仏)をちゃんと唱える。
南無阿弥陀仏は、冊子をお持ちの方にはお馴染みの、母神ナンムに通じるフレーズ。
一時休戦を決め、協力し合う二人。
途中で偽札工場も発見。
地下から脱出したルパンは、クラリスの元へ。
不二子ちゃんにも手伝って貰って今度こそ助け出せた、と思いきや追っ手に銃で撃たれるルパン。
クラリスの機転で逆に助けられ、彼女を一人残したまま、父っつぁんと不二子ちゃんに連れられて空路で退却する。
ルパンは本編中で、何度も危機に見舞われる。
殊に撃たれた時はこんなで、
もうこれ死んでないの逆に嘘でしょ
な、状況。
そこから驚異的な力で復活再生する。
何度でも蘇る力は、全母の後押しがあってこそだ。
復活のさ中、ようやくルパンの口から、何でこんなに力を尽くすのかの理由になっているクラリスとの思い出話が明かされる。
ルパンが初めてこの国に来て、潜入した伯爵の城から命からがら逃げ出し、大公家の庭陰に倒れていた時のこと。
偶然それを見つけ、怯えて震えながらも水を持って来て、彼に飲ませてくれたのが幼いクラリスだった。
心尽くしの一杯の水への、猿の恩返し。
彼女は成長し偶然再会した場面でも、気を失ったルパンの顔を、湖の水を浸した手袋で拭いてあげている。
クラリスは恵みの水を分ける、水分まりの女神なのだ。
湖上の城、ローマ水道、この物語は水と非常に縁が深い。
諸説あるが、“クラリス”は、クララと同じ系統の名で、「輝き」や「明るい」の意味を持つラテン語に由来すると言われている。
光は粒子であると同時に波の様にも振る舞う。
光も水もクラリスを良く表している。
復活したルパンは次元や五右衛門と共に、結婚式当日のラストチャンスに花嫁を攫う。
ついでに父っつぁんと不二子ちゃんの働きで、偽札作りの現場も宇宙中継で全世界に公開される。
追って来た伯爵と、ルパン&クラリスが対決するクライマックス。
ルパン達はどうなるのか。そしてここから一体、全母性とどう結びつくのか。
さてお立ち会い、の次号となる。
猿と姫の大冒険。
(2018/1/29)