《一つの力》
人類が今日まで持ち越して来た宿題を解き、人型生命体としての真価を発揮する上で、分割意識と御神体、互いの協力は欠かせない。
意識が覚めていない頃から、それは変わらない。
覚めやらずムニャムニャ言ってる間でも、御神体と言うカミさんの伝えて来ることを意識が丁寧に聴き取っていれば、少しずつ息は合って来る。
すると、分割意識のみの裁量ではとても成し遂げられない様な仕事が、出来てしまうことがある。
それを地で行く男のビジョンを、大分前から上に送って来られていた。
だが、何せ未知のウイルスに世間がワーキャーなっている件について書く方が先だったので、そのままにし、危うく放り投げるところだった。
そこに、又もチラチラと彼のイメージが飛来。
「あ、そうだっけ!
しつこいぞ!」
と返した。
手前で勝手に放っといて、しつこいぞもあったもんじゃないが、その時の宮司は相変わらず色んなものに意識を向けて入力したり出力したりしていたので、そんな適当な返しになった。
適当に返しつつ、しゃーなしとそれまでの作業に急ブレーキをかけて、提示された存在についてやっと調べ始めた。
途中、
「うわ~、69作もあるじゃんか」
と知って、天を仰いだ。
この時点では全く以て、「勘弁しろよ~」の気分だった。
鑑賞に要するエネルギーは多分、ハリー・ポッター超えだろうからだ。
山程することがあるのに、それらを押しのけてまで知らせて来るとは一体どう言うことなのか。
だが次第に「何故今、これなのか」、その重要性が分かり始めるにつれて、「しつこいぞ!」時点の宮司と「勘弁しろよ~」時点の宮司を並べてとっちめたくなった。
それ位、大切なことだったのである。
人には謎を解くことに魅かれる。
自ら謎解きに乗り出して楽しむこともあるし、誰かが解いてくれるのを見て、手際の鮮やかさを楽しむこともある。
その楽しみのプロセスに、会話を通して「うちのかみさん」を盛り込んで来る男。
知ってる方も居られるだろうが、このかみさんは作中一度も姿を見せない。
見えるコロンボと、
見えざるかみさん。
分割意識と御神体の夫婦とは、丁度逆になるのが興味深い。
コロンボ作品の面白さと深いメッセージは、シリーズ第一作である『殺人処方箋』に、実に分かり易く表れている。
その為、この作品について筋を追って、来週木曜記事にて詳しく申し上げることにする。
つまり、本日記事は予告となる。
一週間あるので先に本編を観ておかれると「ネタばれ」にならずに作品を楽しむことが出来るし、「一体どんなことを書くやら」の前に、ご自身で気づいてみられることも出来る。
先に、一つだけ書かせて頂く。
コロンボが良く口にしては犯人をイライラさせる決まり文句、
Just one more thing. 「あと一つだけ」。
これには
彼の一つ一つ着実に進めていく地道さと、
相手に隙を与えない真っ直ぐな鋭さと、
物事を自分好みに飾り立てない簡潔さが、
とても良く表れている。
一つだけ、と言えども一つを侮ることは出来ない。
あらゆるものは1。
奥の0から成る、
1だからである。
奥が生む素晴らしき、一つ。
(2020/5/14)