《ふたりのロッテ 問編》
ビュール湖の畔にあるゼービュールと言う場所に建てられた、小さな女の子達が家を離れて夏の間に宿泊する為の、子どもの家。
物語はその子どもの家で、二人の少女が出会うことから始まる。
ウィーンから来たルイーゼ・パルフィーと、ミュンヘンから来たロッテ・ケルナー。
片方は自由気ままでしょっちゅう面白いことを思いつく、そして幾分暴れん坊なところがある。
もう片方は、落ち着いて物静かで我慢強く、子ども扱いを遠慮する位に大人びたところがある。
二人は随分違っていた。
見た目が瓜二つだと言うことを除けば。
どちらがどちらか分からない程、あまりにも似ている少女二人に、周囲も本人達もビックリする。
やがて、全く同じ日に同じ場所で生まれていることと、ルイーゼには父しか、ロッテの方には母しか居ないことから、そっくりである理由が明らかになる。
二人は生き別れの双子だったのだ。
こんな大事なことを知らせずに何食わぬ顔をして暮らしていた両親が、一体何故そんなことをしたのかと双子は大いに気に掛ける。
そしてその理由を確かめる為、ある計画を思いつき実行する。
大胆さときめ細やかさ、努力と集中力とが同時に要求されるチャレンジである。
二人は一緒に居られる間に出来る限り互いの生活について教え、練習を積む。
そして夏の休暇が終わった後、局留めにした郵便で連絡を取り合う約束をして、ルイーゼはロッテにロッテはルイーゼに、それぞれ成り代わって親の元に帰ったのだ。
この驚くべき計画が果たされたのは、二人がお話に出て来る女の子だったからだけではない。
夢物語だから大胆に、そんな程度で行われた冒険では多くの人の胸を打ち、数十年かけて読み継がれ舞台としても愛される様な名作にはならない。
『ふたりのロッテ』は深いメッセージを宿した作品であり、こうした‟生きている物語”に当然のこととして、二人の冒険にはそれを支えた下地がある。
親から秘密にされていたことを、彼らは彼らも親に秘密を作りつつ、解き明かそうとした。
秘密には秘密で。
この大胆かつ素敵な計画を思いつき実行するまでに、二人は大きな内なる変化を遂げていた。
それを明らかにするのが次回の記事。
本日からの三日間を用いて、皆様それぞれに、意識を向けてみて頂きたい。
一体、何によってルイーゼとロッテはその様に成長したのだろうかと。
「人が内なる成長を遂げるに必要なもの」を物語の中に発見することは、翻ってご自身にも活かされる。
三日間、秘密。
(2019/10/28)