《空の骨》
ひょんなことから外出先で、生き物に関するTV番組を観た宮司。
この日は、かつて地球に生息した巨大恐竜について知らせる内容を放映していた。
調べてみると一年以上前に放映された別の番組を、部分的に再構成したものであるらしい。
観ていてとても面白く味わい深いと感じる情報があったので本日記事ではそれについて書かせて頂く。
南米で化石が発見されたことによって、史上最大級の恐竜として知られることになったプエルタサウルス。
その全長は35m、体重は80トンにも及んだと言う。
竜脚類とよばれる植物食恐竜の仲間であり、小型の肉食恐竜を蹴散らす堂々とした姿は象に、高い樹にゆったりと首を伸ばして葉を食べる姿はキリンに、起きている間は時間の多くを食事に費やしている姿はコアラに似ている。
今に生きている色んな生き物にちょっとずつ似ているプエルタサウルスは、現在地球で活動しているどの生き物にも似ない巨大さを持っている。
彼らはどうしてこんなに大きくなれたのか。
大きくなる必要はどこから生まれたのか。
そして生き物のそうした必要を叶える原動力はどこにあるのか。
大きくなる必要については、彼らが生きていた恐竜時代の過酷な生存競争が大きく関わっている。
肉食恐竜の巨大化に対抗して、生き残る為に植物食恐竜も様々に進化を遂げた。
固い甲羅を持ったり、大きな角を持ったり、プエルタサウルスの様に倒して食べることが難しくなる程大きくなったり。
プエルタサウルスの体内には、巨大化を可能にする仕組みが備わっていたことも化石から明らかになって来た。
その仕組みには背骨の空洞化と、気嚢と呼ばれる肺と繋がっている袋状の器官の存在が欠かせない。
気嚢を使うことで、空気を吸う・吐くどちらの時にも、肺に酸素を送り込むことが出来るそうだ。
効率のよい呼吸システムのおかげでプエルタサウルスは急成長と巨大化を可能にしたと番組では説明されていた。
さらに気嚢は、体に張り巡らされた別の袋状器官とも繋がっていたらしい。
その器官があったのが骨の中。
空洞化した骨の中に風船や浮袋がある様な状態で、竜脚類はその巨体を軽くして、楽に支えることが出来たとは何とも面白い進化と言える。
骨は通常、体の中でいちばん重く、物理的な制約になるものだと言う。
それが空洞化することによって、強さを失わず大きくなったことも実に興味深い。
「中身が空っぽ」と人間が言う時、そこには脆さや弱さの意味が含まれていないだろうか。
だがこの様に、脆くならずに大きくなることもあるのだ。
更に現代でもこの空洞化した骨を持っている生物が存在すると番組で紹介され、何と見事なものかと感心した。その生き物とは、
鳥。
鳥が恐竜の子孫であることは以前から言われて来たことだが、彼らは御存じの通り、プエルタサウルスみたいな大きさは持っていない。
鳥の空洞化した骨は軽くなることによって、巨大化ではなく飛行を可能にしたのだ。
大きくなること。
空を飛ぶこと。
そのどちらも、空洞が叶えている。
空から後押しされているとは、とても味わい深いことである。
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(2024/8/22)