いまところ

 

「花粉症じゃないんですか」

 

この季節、クシャミをしたり鼻を噛んでいる人々から、たまにこう聞かれることがある。

 

「はい」と答えると、

 

「そりゃ羨ましい」

「私なんて辛くて」

 

から始まり、何でか不運みたいな話になる。

 

何の拍子に花粉症になるのか。

 

症状に差があるのは何でなのか。

 

そうしたことが未だよくわからないから、運を理由にするしかないのかも知れない。

 

 

全部元は同じと分かっていておいて、幸運な人扱いされて喜ぶことはない

 

覚める前なら、同情心に溢れた善人プログラムに沿って、申し訳ないような居心地の悪さを感じていたかも知れない。

 

「お大事に」等、労わる言葉を贈っても、この辛さがない人とある人の間に、何と言うか埋まらない隔たりがあるような気がしていた。

 

だが、先日ふと「はい」の代わりに浮かんで出て来たのが

 

所は」

 

すると、どんな労いの言葉を添えるより場の雰囲気が和む

 

いつなるか分からない、つまり同じ地平に居ると言うこと。

 

実際なるかどうか、全く分からない

 

なった人だって、ずっとそのままか、はたまた症状が消えるかは分からない

 

何もかも、今の

 

 

そしてどの場所も、どの人も、在る

 

あの頃や、いつの日かなど、過去や未来に設定した、いつかに居る気になっているのは意識だけだ。

 

意識だけが、自由に飛び回る。

 

そして戻って来るのは常に、今の所なのだ。

 

今この場所を愛する。

(2025/4/10)