《不変の誠実》
“真っ赤なお鼻の
トナカイさんは
いつもみんなの
わらいもの…”
「みんなって、誰?」
クリスマスも近まったある日、この有名な歌詞の不思議さに、改めて興味が湧いた。
日本語に訳された歌詞からは分からなかったが、元の詞はこう。
“Rudolph the red-nosed reindeer
Had a very shiny nose
And if you ever saw it
You would even say it glows
All of the other reindeer
Used to laugh and call him names
They never let poor Rudolph
Play in any reindeer games”
(赤鼻のトナカイ ルドルフ
ピカピカ光るお鼻をもっていた
君も見たらきっと光ってると思うかも
ほかのトナカイ達は 彼のことを笑って
一緒に遊んでさえくれなかった)
みんなとは、サンタのもとで働く、同僚のトナカイのことだったのか。
周囲から笑われて仲間外れ、なかなかに難しい職場環境である。
そんな折、状況を一変させる出来事が起きる。
歌詞はこう続いている。
“Then one foggy Christmas Eve
Santa came to say
Rudolph with your nose so bright
Won't you guide my sleigh tonight?”
(ある霧の濃いクリスマスイブ
サンタが来て言った
「ルドルフや、その明るい鼻で道を照らしてくれないか?」)
視界不良では、プレゼントを届ける仕事は難しくなる。
その為かも知れないし、ルドルフが経営者であるサンタから頼りにされているからかも知れないが、周囲の評価は引っくり返る。
“Then all the reindeer loved him
And they shouted out with glee
"Rudolph the red-nosed reindeer
You'll go down in history!”
(仲間のトナカイ達はルドルフを見直して
歓喜の中こう叫んだんだ
「赤鼻のルドルフ、お前は歴史に残るトナカイだよ!」)
「え…急に!?」
調子良いこと、この上ない。
それまで馬鹿にして笑っていたことも、仲間外れにしていたことも、なかったことに。
一切の気まずさなく、歴史に残るぜと讃える歓喜で終わっている。
鼻赤くするの、流行ったりして。
ルドルフを除くトナカイ達が、ビックリするほど面の皮が厚いことに感心しながら、このお話の重要な点はそこではないことにも気づいた。
赤い鼻は、赤いまま。
ピカピカなのも、そのまま。
ルドルフはルドルフ。
一ミリも変わっていない。
周囲に笑われていても誠実に役割を果たし、
讃えられる様になっても、同じ様に果たす。
その変わらぬ誠実さが、
己を活かして道を開く、
新たな機会を呼び込むのだ。
己の質を、周りは決めない。
(2024/12/23)