《抜き余るババ》
「そうか、ハハを濁すとババになるか」
と、母性の停滞についてヒントを発見した宮司。
切っ掛けはこれについての調査だった。
ババ抜きと呼ばれる、トランプを使った遊び。
人数分に分けて配られた同数のカードを持ち、一枚ずつ他から抜き取って持っている中に同じ札があれば揃えて捨てる。
これを繰り返し、一枚しかないので必ず最後に余るジョーカーを持っている人が負けとなる。
元はトランプカードの中にジョーカーはなく、余りは作る必要があった。
そこで四枚あるクイーンの中から一枚を予め抜いておき、ゲームの終わりに半端となった一枚が残る様にしていたと言う。
これが、ジョーカー・ゲームの前にあった、オールド・メイドと名付けられた元祖ババ抜き。
明治後期に「お婆抜き」として日本にも紹介され、ジョーカーが余り役に変わっても呼び方だけが残ったそうだ。
女王を婆と呼ぶ遊びが女王の存在する国イギリスで生まれた所に、何となくの思い付きじゃなく、ゲームにかこつけても婆扱いしたかった当時の世相が感じられる。
とは言え老婆や祖母ではなくold maidとは、和製英語のオールドミスに同じで、婚期を過ぎた未婚女性を意味する。
そこから几帳面で喧しい人、小うるさく神経質な人と言う意味が生まれ、これは男にも女にも言う。
特徴を見ると日本で言う「小姑」みたいな感じだろうか。
それにしても不思議なのだ。
ババ抜きについて書かれた資料を眺めていると、女性蔑視とか若さの偏重等を指摘し「現代では許されないだろう」とするものがあれこれ出て来るが、それについてではない。
表向き許されないとしても大っぴらに言わなくなっただけで、現代でもその傾向は保存されている。
見慣れたエゴあるあるに収まる価値基準や判断が保たれているだけなので、「よく飽きないなぁ」と感じはしても、そうしたことについては特に興味は湧かない。
そこではない所で「おや」となったのだ。
全く以て不思議だ。
結婚出来ないから、つまり男が居ないから余った女(又は、女が居ないから余った男)であるからオールド・メイドと言われるのなら。
何で、ペアとなって退場する札が、女王&女王なのだろうか?
王と女王をペアにして行ったら、余るのはキングの方ではないか。
1と1、8と8、ジャックとジャック。
何であれペアになるのは「同じ種類のカード」なのに、最後に結婚出来ない女が残ると言う。
これは一体どう言うことなのか。
腕組みして眺めていたら、不意にその理由が意識に流れ込んで「おぉ!」と驚いた。
理由の読み込みが進むにつれて、驚きは納得と深い感動に変わった。
これについては木曜記事に書かせて頂くことにする。
対になるものではなく、同種のもの二つによる成就とは、一体何だろうか。
興味が湧かれた方は意識を向けてババ抜きを観察してみられると、思わぬ気づきが生まれるかも知れない。
余らせてみて、分かるもの。
(2022/8/8)