《酒とボイン》

 

天の川を女神が天に放った乳の道を意味する「ミルキーウェイ」とも呼ぶ様に、お乳には天から授かる豊かな恵みのイメージがある。

優しい甘さで栄養豊富な恵みである乳を、求めればふんだんに与えてくれる、やわらかな存在。

そんなおっぱいは本来いのちの健やかな成長を促す為にあるのだと言うことを示す歌がある。

 

 

随分風変わりな歌だ。そもそも題材が、おっぱいを意味する“ボイン”であることがもう珍しい。

茶化している様でいて、胸にしまって置く他ない不満があるから膨らむのだと、女性がその立場によって長年抱えて来た言うに言えない苦しみや悲しみにも寄り添う慈しみを感じる。

“何で 女の子だけボインになるのんけ

 

腹の立つ事 嫌な事 シャクな出来事あった日は

 

男やったら酒のんで あばれまわってうさ晴らし

 

女の子ならなんとする 胸にしまって我慢する

 

女の子の胸の中 日頃の不満がたまってる

 

それがだんだん充満して来て

 

胸がふくれてくるんやで”

何と言う豊かなイマジネーション。

 

 

その一方で、

“おっきいのんが ボインなら

ちっちゃいのんは コインやで

もっと ちっちゃいのんは ナインやで”

と、多様さを表して、主に男性から見て面白く感じるだろうユーモアも含んでいる。

コインのコはで、ナインのナイはだろうか。

 

 

現代ではこうしたサイズを比較する表現もセクハラに入って来るのかも知れないが、中立に聴くと全体の内容は、女どちらのことも上げたり下げたりし続けない粋なものに感じる。

対になっているのがどうして「男」と「女の子」なのかが謎だったが、これは酒が飲める様な年になった若い男女のセットなのだと気がついた。

男はそのまま「男」とある意味雑に扱い、女だけ「女の子」と、ちょっとやわらかくしてある

優しく丁寧に扱われているのか、子供みたいに弱く居てくれと求められているのか、人によって受け取り方は違うだろう。

 

 

その位に、どうとも取れる結構間口の広い歌である。

ボインを求めるのは男性のみにあらず。

偽ボインを取り付けたのがいつの間にやらズレにズレてボディーをお胸が一周旅行みたいな下りで、女の見栄についてもちゃんと指摘している。

凄いバランス感覚だ。

曲を作って歌っている者の人生は、こさえた家庭を飛び出したり、他所の家の女性を追い掛け回したりと、決してバランスのいいものではなかった模様。

何だこりゃ。


一個人としてはとっ散らかっていても、表現者としての仕事は中立に出来るタイプも不覚社会には存在する。

おそらく最も有名な一節である、

“ボインは  赤ちゃんが吸う為にあるんやで

お父ちゃんのもんとちがうのんやで”

は、「お父ちゃんは何の為に吸いたがるのか?」と言うクエスチョンに不覚の意識達を誘導することで、お色気めいた風味を出そうと作られたものだろう。

 


しかし捻らず素直に聴くと、上や全母からの

「虚空の天意は本来、万物生成発展と言う弥栄の為にあり。
 エゴ快楽興奮への欲求を満たす為にあるのではなし」

と言うメッセージ見事に写し取られているのが分かる。

聞く所によるとこの曲は、その場のノリ短時間に出来て、ビックリする位売れたそうである。

 


個の都合が介入する暇がなくツルっと生み出されたものに、全母の天意が宿ることは多い。

腹の立つことや嫌なこと、しゃくな出来事等と上手く付き合って行く為に酒とボインに甘えて、それらを変な風に使って来たのが人類。

しかし、酒もボインも浴びたり溺れたりする為にあるものではない

酒は幸わうに通じ、神へ捧げる祝いと言うのが本来。

ボインことおっぱいも、不満収納庫ではなく祝福の宝庫である。

その晴れやかさはこのおっぱい讃歌で感じることが出来る。

 


こちらは女性が作詩をしている。

タイトルにもなっているフレーズに続くのは“うれしいな さわりたい”“きれいだな だいすきさ”と言った、ちいさな人による無邪気な表現で示される歓び讃辞

そして、人間の坊やと嬢ちゃんだけでなく動物達までが、大きなやわらか素材の空飛ぶおっぱいに包まれて、宇宙を旅する壮大なシーンが現れる。

万物包み込むようでいて、「いっぱい」に相応しく無数広がる粒の様に空間に点在するおっぱい。


極大から極小まで。無限に広がる可能性に唸った。

天意からの愛が溢れる様子を分かり易く感じられる湧出点として、この機会に皆様それぞれ自他を超えておっぱいと言う存在に感謝をなさってみて頂きたい。

助平心思慕優越感劣等感、邪魔と言う嫌悪感etc

そうした余計なものなしに、只々感謝をする時、このやわらかな湧出点が実に祝福満ちた存在であることがお分かり頂けるはずである。

 

絶えることなき、天意の歓び。

(2020/3/19)