《覚めを深める》
「えぇ~、そう来たか」
と、ニュースを眺めていて軽く驚いた宮司。
当節、自宅で仕事をすることが推奨される様になり、同時に飲食店の営業自粛も増えていることから
「お仕事のご褒美」
「巣ごもりのご褒美」
的にお家で飲酒をなさる方が増え、
深酒に至る方も増えた
と言うニュース。
リモートワーク用に環境を整えることで自宅に居ながら、別の場所に居る人と「顔を見て会話」が出来るようになり、会議だけでなく「飲み会」も可能になった。
これまで酒場に通うことが習慣だった人々が、そちらにシフトすることは全く不思議ではない。
オンラインでの飲み会が苦手で出来ない人々も、自粛生活のストレスを癒す目的もあって飲酒に精を出し、
職務上又は経済上の事情で自粛が出来ない人々も、自粛出来ないストレスを癒そうと飲酒に精を出し、
とりあえず、酒が飲める人は皆がそっちに向かっている感じ。
それについて
「えぇ~、そう来たか」
となったのだ。
こんな重要な節目、人類の大転換期に「酔い」をチョイスすることへの驚き。
酒が飲める人は皆、と書いたが「酒を飲むことも出来る、生ける空間」である宮司は、この所ほぼ飲酒をしていない。
一日の充実を祝う夕食時の乾杯には、「ビールに似た味の、シュワっとする飲み物」を頂いている。
飲むと言ったら、たまにお供えのお下がりとして、ミニサイズの酒を頂戴する位だろうか。
禁じている訳ではなく、この見逃せない局面を観察するのには合わない気がしているだけである。
進化の祝宴なら大歓迎だが、今の所そんな機会もない。
宮司にとって酒は娯楽でも投薬でもなく祝いである。遊びで酒を貪る必要も、酒で気を紛らわせる必要もない。
世間とノリが大分違うことに驚きはしたが、それもまぁごく軽くに過ぎない。
だってそれこそ、エゴらしいっちゃらしいから。
「えぇ~、そう来たか。
(秒)
ん~、だよねー」
知ってた!
となった。
酒には緊張を緩和させる効能があると聞く。
コロナ騒ぎ以前よりも多くの酔いを欲する人は、この新しい局面について何かしらの緊張を抱えているのではないだろうか。
読んだニュース記事にも書いてあったが、宅飲みには「閉店」も「終電」もない。
先に終了時刻を決めたり、同居の家族に声をかけて貰ったりして工夫する自制が試されている様である。
先行き不安の緊張を緩和して、
その緩和剤の摂取について
「節度を保たなければ」
の緊張を新たに背負い込む。
エゴある限り、酒で憩うのすら楽じゃないのだ。
そのうち酒量を感知し、「もうその辺にしときなさいよ」とマスターが言ってくれるソフトでも開発されるかも知れない。
横道を補強する小細工ばっかするのがエゴなので、無い話じゃない。
そこらも含めて、ますます覚めた状態を深め、丁寧に観察して行くことにする。
ぐずるエゴに逃げず向き合うのか、酒であやすのか。
それによって道は大きく変わって来る。
酒より覚めを深める必要。
(2020/4/30)