《新しさの力》
この所、人間社会がゴールの見えないジェットコースターに乗った様になり、不覚の予定調和がじゃんじゃん崩れている。
そして、これまで見られなかった光景があちこちに現れている。
人型生命体は本来、未知のものを発見し観察することに歓びを感じる存在。
続く騒ぎによって恐怖や閉塞感、苛立ちや不安が意識内に流れて来ても、それは流れるままにして否定せず、捉まえてもおかないこと。
そして、この機にこそ目にすることが出来る色々を、中立な意識で受け取り味わってみられることを、お勧めする。
先日、春過ぎて既に初夏と言えそうな暖かな陽気の日があった。
このご時世でなければ、「お出かけ日和」と言われるだろうお天気。
まばらだが人の行き交う駅ビルの前で、楽し気な二人連れにふと目が行って眺めた。
互いに手の指と指を交差させ密着させる繋ぎ方をした男女が、笑顔で話しながら歩いている。
彼氏の方は彼女に良い所を見せたい一心でか、盛んに「相手から見て自分の最も格好いい顔」が保たれるように、首を振り角度を変えて忙しそうだ。
鳥の求愛でこう言うのを見たことがある。
彼女もまんざらでもない感じで、微笑んでいる。
そんな相手を見てますます、前髪の流れがどっちに向くかも含め角度調整に励む彼氏。
その手に提げられていたのが、
トイレットペーパー(12ロール入)。
思わず足をとめ、目をみはった。
平素、デート時にこれを手に提げたまま臨む人物はおよそ居ないだろう。
恋と便所は、水と油。
二十歳前後の「カッコつくかつかないかが、意識にとって非常に重要だろう時期」なら尚更である。
コロナの様な切っ掛けがなければ、見ることの出来ない光景だと集中して観察した。
そして、ありがたい教えを受けた。
人はトイレットペーパー12ロール入を提げたまま、格好つけることが出来る。
並びに、
人は、ここまで嵩張り、紙とは言えそれなり持ち重りもするものを提げて、
その存在を忘れることも出来る。
ひょいと手を伸ばして同じ位のサイズの何かと取り換えてしまっても気づかないかも知れない位、楽しそうだった。
その姿に、「状況がどうであれ」それとは別に「今この瞬間を楽しむ力」を感じた。
「彼女>コロナ不安?それとも彼自身の今に居る力が強いのか」
「不覚の“格好いい”が、ついに大きく揺らぎ出した兆しだろうか」
と、目に出来るギリギリまで観察したが、何せ浮かれたカップルのそぞろ歩きである。
すぐに見失ってしまった。
しかし、短い出会いの中に多くのことを教えて頂いた。
良い悪い、カッコつくつかない、有利不利。
そうした基準に関係なく、「新しい」には力がある。
彼女側の「自分の横で気取っている男の手元にトイレットペーパーのパックがチラチラしてても、その好感度は特に下がらないらしい」ことにも新鮮な驚きがあり、唸らされた。
全く、日々は学びの宝庫である。
家から出ても出なくとも、この世界は未知に溢れている。
この変革期。ついに、ジャッジで固定化された社会からも、未知が吹き出すようになった。
それを天意からの愛で観察出来るかどうかに、それぞれの進化がかかっている。
丸いカミの教えに感謝。
(2020/4/9)