《無音に入る》
本日記事では生活の中で楽しめる、面白い試みをご紹介。
物理次元に「音の無い領域」は存在せず、様々な音は引きも切らず鳴り続けている。
だが、極度の集中を頼りに、意識が音の無い領域に入って行くことはある。
どんな外なる音が鳴っても響いても気にならない、内なる音の無い領域である。
そこに入っていると次々に気づきや発見が起こり、そしてそれが自然に深まって行く。
不覚的には驚いてしまう様な理解の進み方にも、平静で居られる。
これを可能にするのが瞑想だが、座って目を閉じなくとも、極度の集中に導かれる何かをするだけで、それは成される。
動の瞑想である。
それぞれの生活の中で、どの行いが極度の集中にもってこいかは違って来るが、例えば宮司がここの所で気に入っている動の瞑想は
アイロンがけ
布の上を進む蒸気の間に、先程まで歪んでいた織目が真っ直ぐ並ぶのが感じられた時、不意に「それまでバラバラだったものが統合されてすっきりとした気づきや発見に変わる」瞬間がある。
蒸気と共に音もしているはずだが、集中している時、「布の織目」と「観察する意識」の間に音はない。
只、それらがそれらとしてそこに在るのみである。
発見や気づきが実になってポトンと落ちて一息つくと、急に様々な音が入り込んで来る。
だが、元通りと言うのではなく、少し変化している。
内なる無音の領域に意識が過ごした後は、より澄んだ状態で周囲で起きることを知覚出来る。
意識を一回磨きに出したみたいになる。
生活の中で動の瞑想にぴったりなものがないか、探ってみると面白い。
車を洗ってみたり、本や食器を並べ換えて整えてみたり、出来れば静物が扱いやすいだろうが、うんと静かなペットが居れば犬のブラッシングとかで無音の領域に入ったり出来るかも知れない。
梳かしてるブラシや手をかじって涎をつけたり、振った尻尾でこっちを叩く賑やかな犬は愉快だが、今回は不採用。
置物級に静かな存在を割り出し、そこに注目して頂きたい。
それらは内なる無音の領域にあなたを案内する役を引き受けてくれる。
すぐに見つからなくとも、その発見までも楽しんで始めてみられることをお勧めする。
まず彼らを見つけるのに意識を澄ますこと。
生活と言うゲームの面白さは、そこから静かに加速して行く。
し〜!で、注目!
☆10月のふろく☆
ひょんなことから、米国のレーザー干渉計型重力波観測所(通称LIGO)の成り立ちを巡るドキュメントを本で読んだのだが、読み終えたちょうどその日に、ノーベル物理学賞の受賞がLIGOの功労者3名に贈られることとなったと報道されていた。
観測された重力波はあまりにも小さく微かだが、きっかけそのものは大きめ。
ブラックホール同士の衝突で起きた波なのだ。
その後もブラックホールの衝突による重力波を数度観測し、今年の夏は欧州の干渉計VIRGOと共同で中性子星同士の衝突が生み出した波を観測した。
景気のいい話である。
天災と人災でごった返す不覚社会にも、世の大多数にとって「これまで有るなんてとても思えなかった領域」からの静かな響き、微かな
「志村〜!
後ろ!後ろ!」
が、伝わり始めている。
読了と受賞の素敵な巡り合わせに気を良くした宮司がこしらえたのが今月のふろく。
《祝ノーベル物理学賞受賞 ブラックホール衝突メモ》
貰ってもなけりゃ詳しくもない賞の祝いを作るとはなかなかの図々しさだが、面白かった。
中央にある「ボーンと行って一部くっついたブラックホール&ブラックホール」の、ヒョウタンみたいなスペースに、白いペンや鉛筆で宇宙の響きやなんかをご自由にお書き下さい。
勿論メモなので、「20時には帰ります、夕食は冷蔵庫に」とか書いてお使いになられてもいい。
ハガキ大に印刷した紙に合わせて、一文字5ミリ程度に納めて書くと、静けさと共に何ともおぼろげで微かな感じが出て来る。
まぁ、でっかく書いた所で、衝突したブラックホールは1つの巨大ブラックホールになり、そのでっかい叫びも吸い込む。
そう見ると吸い込まれる前の、一瞬の徒花の様で儚いものだ。
どんな悪口雑言でも、愛の告白でも、しみじみする不思議なメモが出来た。
[使用例]
全母もブラックホールも言わなさそうなセリフだと書いてみたが、思った以上にか細い感じになった。
宇宙は怒声も吸収する。
(2017/10/26)