《元カノコレクション》
本日記事では、前世好き達について書かせて頂く。
常に今しか存在せず、所謂「過去」と呼ばれるものは「既に体験した瞬間の記憶図」の集まり、そして「未来」と呼ばれるものは「未だ体験していない、これから起きるだろう瞬間の予想図」の集まり。
全て意図したものであり、実体はない。
その「ないもの」に、魅かれるのは何故か。
図の連続によって物語が発生し、そこに感情が紐づいているから。
だから前世や来世も出来るだけ、自らと思っている「被っているエゴの皮」にとって、快をもたらすものが求められる。
陰陽師、修験者、魔女、何であれ、
その他大勢に使うことの出来ない力を持っていた前世
は、大人気。
くどい自慢話にならない様に、「力が有るからこそ起きた悲劇」とか「それ故の苦悩」とかをまぶせば、話に出し易くなるので、そのセットパターンが多い。
奴隷や娼婦、罪人であった前世
とかも、人気がある。
それなりドラマチックで、「そこを終えた、より幸福な今がある」とオチが付けられる。
それに、「そのことで、ちょっぴり謎や影を残してるので、気にしてね」と、周囲に注意喚起することも出来る。
どちらにしろ、人目を引く記憶情報のある御神体についてばかりが重点的に語られる。
それなり山あり谷ありあったけれど平凡な生涯を終えた農民や町人
だった頃の前世を紐解こうとする者が居ないのは何故だろうか。
不覚者の前世コレクションは、雑だ。
要は、男連中の集まりで、
「俺。昔、女優と付き合っててさ」
みたいな話が出るのと同じ。
本当に真摯に前世と言うものと向き合って、昇華が為されるまで対峙し続けていれば、ちゃんと終われる。
そう度々蒸し返さないし、全ての前世に分け隔てなく愛を向けられる。
やれ貴族だ聖人だと、特定の前世に雑な固執をする人々は、お気に入りの元カノを揃えた打線でも組むつもりなのだろうか。
何ジャパンなんだ、それは。
「昔、アイドルと付き合ってて」
「女王様と付き合ってて」
そんな女性遍歴や御神体遍歴を披露して、他から一目置かれたがるのは、男ではなく坊やの行いだ。
「前世」「来世」とすると、仏教の影響もあって「尤もらしい」ものと捉えられがち。
だが、入れ込めば今への注力を削がれるし、そもそも別に「尤も」なものでもない。
他にひけらかさなかったとしても、延々と意識の中で「あの頃の自分物語」をこねくり回したり、ふとした拍子に「忘れられない記憶」みたいなのが湧いて出るなら、それは未練がましく、
元カノを脳内でストーキング
しているのと変わりない。
真の男(分割意識)の振る舞いとは言えない。
歪んだビジョンで都合良く編集した過去を、スナック感覚で頬張る坊や意識。
それも、今カノに抱きしめられていながら。
体よく、何なら
元カノと今カノの二股
を意識上で楽しんでいる。
こう書くと、「どれだけダサい振る舞いなのか」がお分かり頂けることと思う。
『晴れた日に永遠が見える』と言うタイトルのアメリカ映画がある。
催眠によって前世の記憶が明らかになる物語で、西洋の魔女的前世のあった端末には殊に「来る」内容となっている。
詳しい内容をここには書かないが、前世だ来世だと性懲りもなく続く人間物語を、澄み渡る空が包んでいる様な爽やかなシーンがある。
完全に「誰でもないもの」となった時、包まれるだけでなく空そのものと一体になる。
それはお気に入りのストーリーを手の内に残しておいては、絶対に辿り着くことの出来ない境地なのだ。
クリアになって見えるもの。
(2018/7/12)