《スロー・ダンス》
ひと月程前に執り行なった祭の翌日、帰路につく前にその土地を散策していた時のこと。
途中で、駅から少し離れた場所にある神社に参拝した。
そこで男神籤と女神籤を一つずつ引いたのだが、比べてみると分かりやすい共通点があった。
男神籤には「時にはペースを落とし周囲と歩調を合わせる」
女神籤には「ゆっくりと歩むからこそ見える幸せもある」
そう書かれていた。
人類最先端の叡智を読み解いたので、ここから変化が波及するのに、少し時を要するらしい。
「えーっ」
と、言うのが正直な感想だった。
何でかと言えば、受けた情報はふさわしいタイミングでふさわしい方々にお届けすることが出来た。
活かして下さる方々へお渡し出来たので、以降はお任せして、こっちは更に先に進むつもりだったからだ。
何でワシまでゆっくりじゃい。
と、憤慨していたのだが、今夏に起きた気候の変化を観ていて、「成る程なぁ」と納得した。
自然がはっきりと統合に向けて、ある種「意思表示」の様な面も見せて予定調和を手放し出した。
線状降水帯はそのまんま積乱雲で出来た龍だが、それがあちこちの空で飛び、かつてない勢いで雨が降った。
それが来なくても、ルンバみたいな変な動きのゆっくりとした台風で丁寧に丸洗いされたり、かと思えば朝な夕なに小分けで雨が降り続く地域もある。
雨でなく大気中のたっぷりした水分に高い気温を加えて、サウナで蒸されたようになっている地域もある。
手を替え品を替え、しかし全て水を含ませる動き。
水を含み、緩んだ所が傾いていたら、当たり前に崩れる。
「中心に在ることの重要性」が、ここまでシビアになるとは、中々と言える。
「猛暑」「酷暑」「夏バテ」「もううんざり」「変な天気」「早く秋になって欲しい」「夏がなく、もう秋が来た」「夏の虫と秋の虫、一緒に鳴いてる」
毎度お馴染みの決まり文句や、予測不能な状態への気味悪げな苦情をワーワー言い立てるのは耳にするが、「夏らしくて気持ちがいい」「意外と涼しくて有り難い」「ダムには水が一杯だ」と言うのは聞いたことがない。
これについて不思議はない。
「不覚者と気候」に関しては、観察して既に調べが付いている。
不覚の人々が気候に対し、上機嫌で幸せや感謝を言うのは大体2パターンしかない。
暑い日が続いた季節の終わりに、さーっと涼しい風が吹き始めた時
寒い日が続いた季節の終わりに、ふわっと暖かな風が吹き始めた時
要は、「飽き飽きしていた辛い状態が、快方に向かう」時にしか喜ばない。
春や秋の過ごし易い気候には快を感じはするが、余程感覚が開かれていないと、そこにいちいち細かく感謝はしない。
逆に、文句の方はちょこちょこ言う。
暑けりゃ暑いで文句言い、
寒けりゃ寒いで文句言い、
暑くも寒くもなきゃ、何だか気味が悪いと文句を言う。
これ程までの態度にも、別に天は怒って裂けたりはしないし、地も怒って割れたりはしない。
日々淡々と在り続けるので天も地も、えらいなぁと感心する。
そんな器の大きい天地が、敢えて変化を開始した。
地盤がフワフワで、ちょっとの傾きもダダ滑りになって来る世の中で、宮司だけがとっとと先に行ってじゃんじゃん深層を堀り起こしても、全体の役には立たないのだ。
それもあって今月はスヌーピーやトーマス等の、ふんわりした“おむすび”が多めに出て来た。
神籤にあった「ゆっくり」には単なる減速以外に、「肌理細かに」の意味もあると感じる。
お伝えしたことが、より活きる様に尽くして行くのも大切な仕事。
と言うことで一先ず、当宮で読み解いた情報を、おそらく最も活かし広めて下さっている或る方とお会いして、より深く、話を通して来る。
今の今は、それが最も全体に貢献する一手と見たからだ。
その方の思惑に当宮が影響を受けることはないので、ご安心頂きたい。
そもそも既に個の思惑から外れた方である。
でなければ会いはしない。
師。弟子。友。指導者。支持者。表現者。ファン。先輩。後輩。
どんな関係性であれ、どちらからどちらへの働きかけであれ、「自ら」と見なしたキャラクターから、「相手」と見なしたキャラクターへ、何かしらの影響を与えたい・受けたいと言う思いが残る存在には、一片の興味も湧かない。
その為、おかげ様でこの世に在る人型生命体の殆どと、対話の機会がない。
だが枠と思惑から外れた存在とは、必要があればこちらからお願いして対話する。
あまりない機会なので、ありがたい限りと感謝している。
ともすればすぐに興味の向くまま深層に入って行こうとする宮司だが、天地の意向を尊重し、状況によっては着々と肌理細かに「ゆっくり」進めることの大切さもよく分かる様になった。
目が覚めてからも、ありがたく進化は続く。
スロースロークイッククイック。
(2017/8/24)