《行を捧ぐ》
「えぇ~確かに食べれらるらしいけどね。
あんまりやってみたって人居ないよ?」
図鑑片手に「えーと、これとあれと」と読み上げていたら、店主から驚き混じりの返事が返って来た。
以前記事にも書いた面白い本に載っていた、野山や道端に生えている様な植物達を育てて、ついでに飲み食べもしてみることにした宮司。
そうした植物をまとめて扱っている店が丁度あったので、ノリで訪ねてみたのである。
元々好んで育て商っているからだろう、店主もやがてノッて来て食べるんならあれもこれもと紹介してくれ始め、話が盛り上がった。
こうして食料品店には売っていない植物を味わってみることも含めてこの所、不覚社会の“一般的”からすればちょっと変わった食生活を送っている。
その試みに向かって上が舵をきるのに付いて行動しながら、ふと気がついて「成程なぁ」と納得した。
コレは、“これ”に捧げ易い孝行であると。
宇宙のおじさんの気軽で身軽な単独生活には、共同生活者の意見が絡んで来ない。
「朝は米の飯を食わないと力が出ない」と言うメンバーも居ないし、
「クックパッドで見て作ってみたの、沢山召し上がれ」と言うメンバーも居ないし、
「3時のおやつにホットケーキを焼いて欲しい」と言うメンバーも居ない。
「よし、やーろうっと」と決めたその日から、それまでのノリと一切違うメニューを食卓に並べても、全くモメないのだ。
以前記事に書いた、
“何かがあるってことは
別の何かがないってこと”
の様に、出来る出来ないが決まる訳ではないが、人型生命体と言う端末ごとにそれぞれ環境や状況が異なれば、全体に向けて捧げ易い行動も違って来る。
人とのやり取りがある中でこそ、全体に捧げることが出来る行いもある。
只、それにかこつけて
「良人に対し一心に尽くせば、世界に愛が行き渡るのだわ」
とか、
「老親の支えになることに、全母への孝行を重ねてみよう」
とか、
「我が子を育て上げることで、全体に貢献しましょう」
としつつ、
力を注ぐ対象との関係に酔って、個を超える全体観察や愛の発揮を怠るならそれは、
お弁当の中の、好きなおかずだけ食べて、後はポイ。
と、何も変わらない。
個の感覚に沿った情動で、目を覚ます者は居ない。
それを目を逸らさずに認めて腑に落とす時ようやく、機に応じたそれぞれに捧げ易い行いを、素直に受け取ることが出来る。
捧げ易いものが流れに沿って巡って来るなら、引き受けるのが自然。
宮司も、少々風変わりな食生活の機会に
「おーし、やったろうじゃないか」
と、腕を回してみた。
当たり前だが、これは健康だとか美容だとか人間が求めるあれこれの方面で、「宮司を名乗る“これ”をより良くする為」に行うものではない。
そして「より良くなった内容を人に知らせる為のもの」でもない。
「○○は体にいい」とか「○○は食べちゃ駄目」とか、不覚者はより良き正解を求める風で、ずっと理想の周辺をうろついている。
だが、その理想だってよく見りゃ人それぞれ微妙に違う様に、そもそも人の体が一人一人違う様に、その意識や御神体に必要なものも、その時その場でそれぞれ違う。
“共通する正解さえ手に入れば、そこに安心して付いて行けるし、
共通する正解さえ手に入れば、人の支持や尊敬を集められる”
「求める風で」と書いたがそうやって、より良き共通解を探す人々が欲しているのは概ね、
「やったーこれだ!」
と言う興奮である。
興奮は熱を増し、うねりとなることもあるが放っておけば沈静化する。
昭和期に流行ったそうだが、もう誰も紅茶キノコで大騒ぎしたりしない。
キノコじゃないらしいキノコ風存在。
崇めドヤれる正解を求める行脚は、興奮を求めてする題材の使い捨て。
自意識を肥大させていのちエネルギーをすり減らすに留まるものと、申し上げておく。
只今こちらに巡って来ている捧げる行について、より良くするものではないが、より成長するものだなとは感じる。
そしてその成長は、全体と全母に捧げる行いにこそ起こるのだとも、理解している。
全に行捧ぐ歓び。
(2021/6/28)
6月のふろく《行の抽出メモ》
行を捧げることについて、してみたいが何をするのか浮かんで来ないと言う時や、何となく浮かんでいるビジョンを整理したいと言う時に役立つメモをこしらえました。
中央の丸を囲む8つあるスペースにはそれぞれ、
蝶:憧れて来たものや理想
黒い金魚:父方からの宿題と感じるもの
赤い金魚:母方からの宿題と感じるもの
熊:有るもの(知識、経験、技術、資金、能力etc)
兎:職場や家庭など取り巻く環境
鳥:興味あることやもの
猿:避けて来たことやもの
猫:自由気ままでいられる時はどの位あるか
をそれぞれお書き下さい。
それらをじっくりと観察し、エッセンスを抽出する感覚で集めて合わせ、中央に行のテーマをお書き下さい。
下の欄には日付と具体的な行動を書き込める様になっています。
只今必要な行いを明らかにし、実践をお楽しみ下さい。