《空白の使者》
本日は先週記事にも出て来た、トランプについて書かせて頂くことにする。
数年前に起きた気づきと発見のことが先日ふと蘇り、改めてこのカードゲームと、これを生んだ歴史の流れを興味深く眺めた。
あれからもう大分経つ気もするが、ここまでの情報は人類にとって未だ用のないものであり、全体一つの道の遥かさを感じる。
まぁ人類にとりどれだけ遥か彼方だろうが、観察し変化を楽しみ続けることに変わりはない。
トランプの歴史は古い。
そして殆どの国でこれは、トランプとは呼ばれない。
世界各地で様々な呼び方があり、日本ではゲーム内で使われる「切り札」のことを指すトランプが、そのものの呼び名となった。
歴史を遡るとカード一揃いにおける内容も様々で、ハート、ダイヤ、クラブ、スペード四種での構成はその内の一つに過ぎない。
ハートは杯、ダイヤは貨幣、スペードが刀で、クラブはポロ用スティックとなっている組み合わせもあった。
ポロに馴染みのない土地ではいまいちピンと来ないからか、棍棒や杖など形状が似たものにアレンジ。
広まる先の土地の事情に合わせて、どんどん変化する柔軟さ、廃れない伝播力は人の思惑を超えており、とても興味深い。
そしてこのトランプ、現在主力となっている説では、発祥は中国と言われている。
以前はエジプトなんて話もあった様で、エジプト発祥のタロット→トランプの順で生まれたとされていた。
現在では親子の立場は逆転し、ゲームとして楽しまれて来たトランプから、占いの為に神秘性を強めて出来たのがタロットだと言われている。
囲碁や将棋がそうである様に、トランプも戦いの要素が強い。
中国で確認された最古のトランプ的カードは、概ね銭の量が多いか少ないかで分けられており、儲けを競う戦いだった模様。
銭でも人でも何にせよゲームは比べ合いからの競い合いや奪い合いで出来ており、不覚的に見て善なる感じで言えば「切磋琢磨」、逆に悪なる感じで言えば「弱肉強食」。
勝って負けて、獲って獲られてを繰り返し、勝負がついても「もう1回!」となったりする。
これはまるでエゴそのものだと、このカードで楽しまれる様々なゲームの仕組みを面白く眺めた。
どう言う時に勝ちになるのか。
それを観察すると「人間が生きる上でどの様な状態を欲し、どうあった時に喜びを感じるのか」が見えて来る。
例えばポーカー、と言ってもその中にも様々な種類があるが、そう呼ばれるゲーム群を観察する時、
ある瞬間に互いの手札を晒し、そこでより強い組み合わせを持っていた時に、人は興奮し喜ぶ
ことがあるのだと分かる。
決着する前に、ゲームで勝利する為の算段、駆け引きや騙しにも人は興奮し、喜びを感じる。
そして、
強い組み合わせを持っていないのに、持っていると相手に思わせて、
首尾よく勝負を降りさせた時にも、人は興奮し喜ぶ
ことがあるのだと分かる。
ゲームは人のエゴについて、様々なことを教えてくれる。
トランプは虚空が人類に向けて、エゴについて深く学ぶようにと提供した切り札であったかも知れない。
その切り札で、遊びまくることしかしないのなら、当たり前にやんちゃ坊主のままとなる。
タロットがトランプの子だと聞いた時にはそうであっても不思議ない気がした。
と言うのも、「青は藍より出でて藍より青し」ではないが、「エゴはエゴより出でて更に業深し」だからだ。
その時その時で勝った負けたを競う戦いより、運命を示すことで未来も予約編集しようとする動きの方が、入り組んでいて業が深い。
「嫌なもの」「好ましいもの」「避けたいもの」「欲しいもの」等、様々な「これはこう言うもの」が定まっていないと出来ないことだからだ。
「勝った負けたって、結局なんだろ?」となる観察用に物理次元にやって来たトランプを、混ぜっ返しては「ハイもう一勝負!」とやり続けて来た人類。
そんなやりたい放題にも変わらぬ天意を送り観察して来たのは、この世の何とも勝負していない虚空である。
ジョーカーも含めた札一揃いの他に、白紙のカードがトランプには付いていることがある。
ブランクカードと呼ばれ、失くしたカードの代わりにする予備的存在だそうだ。
全部どっかに忘れたり落っことすとかじゃなく、1枚2枚だけ失くすシチュエーションてそんなにあるのだろうか。
花札やUNOにも空白のカードが付くことがあると言う。
どんな手札にも穴が空く可能性があり、
その欠けた部分を自在に埋めるのは、
何でもないからこそ何にでもなれる空白。
ブランクカードがそのことを伝える役割を果たす使者であると気づく時、手に乗る程の札の奥に無限を感じることも出来るのだ。
虚空の天意、告げる空白。
(2021/5/31)
5月のふろく
《凡ジョーカー》
ブランクカードと並び、重要なメッセージを含むのがジョーカーです。
ゲームによって邪魔者だったり強者だったりと、役割が変化するジョーカーは、場を大きく掻き回す力を持っています。
このジョーカーに向き合い、観察する為のふろくをこしらえました。
ジョーカーに不気味さや嫌悪を感じる方は、ご自身の意識にある「世の中でこれは認められないと言うタブー」を、
ジョーカーに小気味よさや魅力を感じる方は、ご自身の持つ「世を渡る為に便利に使って来た武器」を、
それぞれ自由に、カードにお書き下さい。
そして飲み物とおやつを用意し、静かに味わいながらその間だけに集中して、内なる「ジョーカー」に向き合われてみて下さい。
時を区切るのはジョーカーについて時をかけると、きりがなくなるからです。
向き合って、認めがたいもの、手離し難いものに対し意識内で変化が起きましたら、それもカードの下にお書き添え下さい。
ジョーカーは、自らをも掻き回し変化させます。
意識が抱える自分像で、変化しないものは一つもありません。
変わり行く面白さを味わってみられて下さい。