《心配ラッピング》
「心配だ!」で包んだメッセージを送る時。
送られた相手は、中身はどうあれそのメッセージを「善意によるもの」と認識し、受け取りを断ることが難しくなる。
ほぼ確実に届く一方で「心配なの」に対して、その心配をされた側に、心底から感謝する様子が見られることは滅多にない。
する側は相手の為にしていると思っているのに、心配は何故か感謝を生まない。
このエネルギーの奇妙な流れを観察していて、心配する思いの本質、“心配の中身”を発見した。
最も手強いだろう例を挙げてみる。
「お母さん、あなたのことが心配なの」
家族とは、任期終了時期が不明で、解散が困難な集団。
多くの人にとって最も影響力の強い括りと言える。
そうした集団の中で、更に「自分」と信じた存在を産んだ、肉の母。
生母から発する「心配なの」の拘束力は、心配業界全体における最高値をマークするかも知れない。
「お母さん、あなたのことが心配なの」
この例文が意識上に浮かんで来て、しばらく眺めていたらうっすら透けて見える「中身」に気づいた。
ついでに、心配が建前のフレーズ、ラッピングだと分かったので、遠慮なしにそこを破いてみた。
宮司を名乗る“これ”は、この例文を直接言われた記憶がないが、貰ったプレゼントでなくとも、中を見るのに邪魔な包装はべりべりと引っぺがす。
行儀の悪さも、時に応じて役立つことがある。
「心配」と言うラッピングを剥ぎ取った時、出て来たのは
「お母さん、あなたのことが不安なの」
「お母さん、あなたのことが不満なの」
剥き出しにしたその訴えは、愛ではなく欲による要求だった。
「おわ~、これじゃ感謝されない訳だ」
と、心底納得して膝を叩いた。
不安なのも、不満なのも、ひとえに心配をする側の都合。
その解消を訴える相手に向かって、お願いするならまだしも、親切ごかして伝えるとはどう言う了見なのだろうか。
どっからどう見ても
説教強盗である。
「説教強盗」を知らない方に、軽くご説明すると、盗みに入った家で犯行後もしばらく居座り
「戸締りがいいかげんだ」
「泥棒よけに犬を飼いなさい」
「門灯は明るく」
等の親切ぶった説教をする泥棒スタイルのこと。
説教強盗はお縄になるが、心配ラッピングを使って、欲するものを相手からもぎ取って行こうとするエネルギー強盗は、別にしょっ引かれたりはしない。
只、「相手」と言う、盗みに入った家のセキュリティーは強化され、距離を置かれて、恨まれたり、疎まれたり、軽蔑されたりはする。
心配をする度に、関係に少しずつ壁が出来て行くのはその為である。
依存と言う“盗み返し”まで起きて、心配界隈は何かと騒々しい。
成程ね~と唸っていたら、久々に上からまとまったことを言われたので、本日記事の締めとして書かせて頂くことにする。
心配をする人よ
得られない感謝を嘆く前に、
相手への思いを自ら見つめ
目を逸らさずによくよく見つめ
その奥に不安と不満を見つけたなら
静かに認めることだ
誰の為の心配だったのかを
そして知ることだ
あなたの心配を解消するのは
相手ではない
あなた自らでしか
それは成し得ない
配る前に尽くそう。
(2019/5/30)