《なしのつぶて?》
日々、あれこれと資料を読み解いていると不思議な言葉に出会うこともある。
なしのつぶてもその一つ。
無しを同音の果物に引っ掛けて、梨の礫と書くそうである。
投げた礫は返らぬものであるとして、便りを出したのにも関わらず
返事のないこと。
音沙汰のないこと。
等を意味する。
更には「なしの礫もない」として、意味を強めるやり方もあると言う。
覚めていないと何かと分かるのが難しく、興奮する為の刺激も求めるので、モノコトを強調する味付けは濃くなる一方である。
ふと目に留まったこの言葉を眺めていて、浮かんだのは
「つぶてだからでは?」
であった。
礫とは、小さい石のことを意味する。
礫についての説明を読んでいたら、
「粒径2mm以上の岩石の破片。粒径256mm以上を巨礫、256~64mmを大礫、64~4mmを中礫、4~2mmを細礫という粒度区分が一般的に使用されている。」
と書かれたものを発見。
そんな区分がこの世にあるとは知らなかったので、驚きつつも嬉しくなった。
調べてみるものである。
しかし、大きさに随分と幅がある。
スタンダードプードルからトイプードル位までの差がある。
礫の世界も色々である。
粒径256㎜以上の岩石であれば、それはもうヒットした相手に何かを投げ返す力が失われる程のダメージが発生している可能性を、検討する方が妥当じゃないだろうか。
「返事ねぇなぁ~」などと吞気に言っている場合ではない様な気がする。
256~64mmサイズの大礫や、中礫で比較的大きめなものも梨より大きい。
石の硬度と当たり所によっては巨礫と同じコースを辿る可能性を含んでいる。
古くは刑罰としての石打があったりした様に、投石は専ら読ませる為ではなく攻撃の目的でする。
石もて追われるや石を投げるとか言う時に、「あっち行け!」「出て行け!」はあっても、「お返事ちょうだい」の雰囲気はない。
ロゼッタ・ストーンを「読んで!」と投げたと言う話など聞いたことがないし、それだともう礫と呼べる感じでもない。
送った内容があまりに強引だったり性急だったり勝手だったり無礼だったりした時に、便りと呼べない様な“礫”化したものとなるのじゃないだろうか。
であれば相手にされなくて当たり前と言える。
当然の結果に向けて皮肉を込めて「なしのつぶて」と言えることは、不思議である。
「あちゃぁ~、便りのつもりで出したけど、“礫”化しちゃってたかなぁ」
そう振り返ることが出来れば、言い分をぶつけるだけではないまともな便りを送り直すことも出来るだろう。
逆に、誠を尽くした便りに対して何の返事も返らないこともある。
これは送り先の方でそれに相応しい返事を書くことが出来ず、手の中にあるのが小石の様な「やり返す言葉」だけだった場合である。
どちらであっても、なしのつぶてと言いながら相手を待つ必要はない。
変容の時代は、待たない時代。
それぞれに相応しい道を行くことである。
小石の投げ合いも卒業。
(2022/7/4)