《なんでもないから》
安定不安定を超えた、何もかも何でもないことを分かった状態。
からっと爽やかに、空っぽの状態。
空っぽのことを、喪失と結び付けて考える人々は、抜け殻状態など楽しくないものを想像するかも知れない。
外側にあったものが「失われて」、心の中にぽっかり穴が空いたよう。
この表現だと、心は外側に形を持っていて、そこに穴が空いた感じになる。
爽やかな空っぽ状態は、心の中であるとか、一部に限定されたものではない。
何でも入って来れて、
何でも出て行ける。
何にもないようで、
見えないものに、
満たされている。
満たされているから何も追わないし、満たされているから静かに至福を味わい続ける。
何て面白い世界だろうと言う、感心と満足はある。
世の中が良くない方向へ進んでいると言う人々は、予め設定した「良いイメージ」に合致しないこと・しなくなって来たことを嘆いている。
そして不満や危機感を起爆剤にして、彼らが思う「良い方向」へと飛び上がろうとしている。
だが、予め世界に注文を付けて設定しようとするのが、非現実的なことなのだ。
実際、世界は良くなっていないし、悪くもなっていない。
世界はそれそのものが、生きて流動し、点滅している。
良くもなく、悪くもなく、なんでもなく、只、完全に。